引用記事:人事が教える「面接で落とすのはこんなヤツ」 失敗例を反面教師に「負ける面接」から抜けだせ!

リクルート出身、元大手メーカーのカリスマ採用担当者の人材コンサルタント常見陽平が、企業が頭を下げてでも欲しがる人材に成長するヒントをお伝えします。小手先のテクニックに頼るのではなく、流行に左右されずにビジネスパーソンとしての底力、生き抜く力を磨きましょう。

 こんにちは。8月26日、私の新作『絶対やってはいけない!負ける面接100』(マガジンハウス)が発売されます。人事・採用担当者の視点で見た、「面接でこんなことをするヤツは絶対落とす!」という100の失敗例をまとめた、ありそうでなかった本です。

 今回は一足早く、その内容を簡単にご紹介するとともに、「負ける面接」の法則について考えてみたいと思います。本には書ききれなかったことを中心に、お届けしましょう。

■「試合やる前から負けること考えるバカいるかよ!」
猪木のセリフに学ぶ、負ける面接の法則

 突然ですが、あなたは面接で落ちたことがありますか? 振り返ってみると、私は、中途採用の面接では一度も落ちた経験がないのです。新卒の時は、面接のマナーやルールもわからず、空気も読まず、落ちまくってしまったのですが。

 「負ける面接」をしてしまう人の多くは、「面接」や「選考」について、理解せずにその場に臨んでいるのだと思います。面接、選考とは、人事・採用担当者にとっては、「今後、ウチの会社を伸ばしていってくれる人材を見極め、魅力を伝え、口説くプロセス」なのです。

 「私を採ってくれるかなぁ」「何かつっこまれたら嫌だなぁ」と考えている人を、口説きたいと思う面接官がいるでしょうか。いませんよね。「負ける面接」をしてしまう人は、自分から「負ける空気」をかもし出しているのです。

 「試合やる前に負けること考えるバカいるかよ!」
これは、約20年前、アントニオ猪木参議院選に当選した後、久々にプロレスの試合に臨む時に言ったセリフです。

 面接もまさにそのとおり。「負けることを考えない」「互いに確かめ合う場だととらえる」「相手に“採用するべきだ”と納得してもらう材料を用意する」「相手を面接してやる、というスタンスで臨む」ことにこだわるべきなのです。そうして実際、私は中途採用の面接で、一度も負けることはありませんでした。

 やや精神論ですが、「負けることを考えない」ことは、面接を通過するための原則です。相手に「採用するべきだ」と納得してもらう材料を整理し、自信を持って臨みたいところです。

■イタいテクニックに走るな! 「お前はもう負けている!」

 私は、学生を中心にたくさんの面接を経験してきました。今回の著書では、実際に見た失敗例を多数紹介しています。面接が苦手だという人は、自分もやらかしてしまった例が見つかるのではないでしょうか。

 数ある失敗例のなかで、私がもっともNGだと考えているのは、面接マニュアル本などで覚えたテクニックに走ることです。テクニックを中途半端に真似して、実際はテクニックにすらなっていないということさえあります。たとえば、以下のような例があります。

■[1]やたらに形容詞を駆使する面接はイタい

 聞く人にとって、形容詞が多い人の話ほど、内容が入ってこないものはありません。結局なにが言いたいのか、わからないのです。また、実際は大したことがないのに、それを大げさに話す人も、形容詞が多くなりがちです。

 こういう場合、面接官は「『英会話をすごく頑張った』とのことですが、具体的にどれくらいの期間、1日あたり何時間くらい勉強しましたか?」というように、具体的な数字や客観的な事実を確認します。

 中身のないエピソードを選んでしまった場合は、すぐにボロが出てしまいます。逆に、中身がある話であれば、形容詞ではなく、具体的な数字や客観的な事実を提示すれば、効果的なプレゼンとなります。

■ [2]簡単な質問に長時間答える面接はイタい

 面接官がその場の空気をほぐそうと、雑談程度の気持ちでピンポン玉を投げた会話のキャッチボールに、いきなりナパーム弾で打ち返してくるようなパターンです。

 たとえば「ここまでどんな交通手段で来ましたか?」との質問に、「はい、今朝は遅刻だけは避けたいと、3時間前に家を出ました。銀座線を使って来ましたが、実は電車が止まった場合も想定して、いったん渋谷駅まではタクシーを使いました。実は、私がこういう手段をとったのも、中学受験の際に、思わぬトラブルに巻き込まれたことがありまして……」と答える人が実際いるわけです。

 「具体的に話さなくてはならない」「発言から価値観や行動特性を感じ取ってもらう」といった、面接ノウハウの使いどころを勘違いしてしまったのでしょう。「気持ちよい言葉のキャッチボール」は面接の基本であり、コミュニケーションの基本でもあります。その辺りの空気は、とくに社会人であれば読みたいところです。

 面接は実は非常にシンプルで、事前に相手のことをちゃんと調べて、自分に関する情報も整理して、互いに働くとハッピーになれそうなことを確かめ合う場なのです。あまり難しく考えずに、コミュニケーションを楽しむことを意識しましょう。

■「弱い面接」は少しの工夫で誰でも改善できる

 「イタい面接」だけでなく、「弱い面接」になってしまっているパターンもよく見かけます。例えば、次のようなパターンは「弱い面接」です。

■ [1]語尾に自信がない面接は弱い

 「〜のようでして」「たぶん、◯◯だったかと思います」など、語尾が言い切り形でない人もいます。遠慮して断定を避けているのかもしれませんが、自信がない、状況認識が甘く管理能力が低いといった印象を与えがちです。

■ [2]研修や福利厚生について質問する面接は弱い

 面接は条件を確かめ合う場であるので、これらを確認する気持ちはよくわかります。実際、働く上では大切です。研修制度にこだわるのは、向上心の現れとも言えます。ただし、面接の場で、内定が出る前にこの質問をするのは、マイナスです。「研修について質問してきた人は落とす」というルールを設定しているITコンサル会社もあるくらいです。

■ 【3】遅刻する、身だしなみなど、マナーがイマイチな面接は弱い

 これはどちらかというと、新卒に多いパターンなのですが、マナーがいちいちイマイチな人もいます。

 まず、遅刻です。もちろん、中途の面接は仕事の合間や、アフター5に行われることも多いので、仕事の関係で遅れてしまうことなどもあるでしょう。ただ、そのリスク管理も含めた時間管理にもこだわりたいところです。

 身だしなみについても、靴が汚れていたり、スーツのポケットが裏返っていたり、鼻毛や目やにがついていたりと、社会人としてありえない人も実際にいます。

 携帯の電源を切っておらず、面接中に鳴ってしまうのも気まずいですね。しかも、どんな着メロ・着うたかによって趣味が疑われてしまうことも。

 このような弱い面接は「ダメ、ゼッタイ」です。

■面接官が優しくなったら不合格 突っ込まれたら次のステップへ?

 ところで、面接官が優しい方で気持ちよく話せたのに、落ちてしまったという経験はないでしょうか? 実はこれにもからくりがあるのです。

 選考において、企業は絶対に応募者に嫌われないようにします。なぜなら、応募者はお客様になる可能性があるからです。そのため、不愉快になることはできるだけ避けようとします(もちろん、そんなことを意識しない失礼な企業もあるのですが)。

 応募者が明らかにイマイチな場合、優しい態度で接して短時間で切り上げてしまうことも。なかには面接官でサインを決めている企業もあります。ある企業では、面接官の1人が文房具の向きを変えるのが合図で、それによってその後の対応を変えるそうです。

 逆にたくさん突っ込まれる面接は、その方に興味を持っているのでちゃんと確かめたいという意味もあるのです。私も、たくさん突っ込まれて「もうダメだ」と思った面接が通過していたことはよくありました。

 優しい態度だからと安心せず、逆に突っ込まれまくったからと言って「落ちた!」と途中で判断し、試合放棄しないようにしたいところです。

 「負ける面接」とは何かを意識しつつ、「勝つ面接」をしたいですね。

 次回もお楽しみに!

常見 陽平[著]