本当に初心者向けだと思えるDSLRとは

仮に誰かから突然「一眼レフで写真を勉強したい」と相談されたとする。
その「誰か」は、写真の絵心はともかくとして、一から基礎を勉強したいと思っているとする。

世間一般では、EOS KissとかD3100などを推奨したりするのが一般的なことだろうとは思う。

しかし、私は全く違う考え方をしている。

まず、上記のようなエントリー一眼は、軒並みAPS-Cフォーマットであり、そういう機材で一から勉強してしまうと、135フォーマット(所謂フルサイズ、或いはLEICA版とも言う)で相変わらず飛び交っている画角に対する焦点距離の尺度がNikonPENTAXで1.5、Canonで1.6倍という係数がかかり、とてもではないが、珠算の段位でもなければ無意識に換算などできないと思っている。

ということで、換算が容易なオリンパスパナソニックがやっているフォーサーズ(4/3とも表記する。マイクロフォーサーズ(MFTとも表記する)も同じ)が係数2に意識的に決めてあるのも親切だが、この9年ほど使ってきて実際あまり不自由しない。

さて、最初に持つデジタル一眼で、もうひとつ人間の側に条件付けしたいことがある。それはどこかの首相ではないが「不退転の決意」で臨むかどうかだ。もし、そうであるならば、ディスコン間際の5D2がお勧め機種になる。現在の価格と基本的成り立ちのバランスがいい。

6Dも発表され、12月初旬には出てくる予定らしいが、プラスチックボディーはいいとして、サブ電子ダイヤルの中に十字コントローラーがある60Dタイプなのが少々ひっかかっている。私個人としては、あのダイヤルが愚直に大きな面積を占領しているからこその操作性があると思っている。ダイヤル周りが輻輳しているのは、必ずしも悪い話ではない場合もあるが、多くのケースでは不自由しそうで怖い。

このフルサイズ機が「不退転で臨むならば」という条件がつくのは、ボディーが少し高価であることはさておいても、レンズがあまりに高価、しかも嵩張り、重いからだ。体力はともかくとしても、よほどの気力がなければ、出動率が厳しいものになると思う。

換算係数2を甘んじて受容してでも、この点、MFT規格のOM-Dなどならば、同じ画角と明るさのレンズ2〜3本とボディー1〜2台で、それこそ5D2+標準ズーム1本と同じくらいの重量でいける。

実用性では、広角側の焦点深度(早い話がボケにくさ)にいささかのハンデはあるものの、圧倒的にMFTの優位性が見えてくる。

加えてオリンパス(とパナ)のセンサーダスト対策は、それ以外のメーカーのそれとは格段の差があり、この点において、いつもセンサーが剥き実の状態のミラーレスならなおさらオリンパスパナソニックが最有力候補になってしまう。

しかしフルサイズフォーマットのDSLRだと、係数なしでネイティブに焦点距離と画角が身につき、後々のメリットは計り知れない。とりあえず28mm、35mm、50mm、85mm、100mm、200mmの画角をしっかりと身につけた後なら、どんな係数のフォーマットであっても、なんとかなると思う。

それが最初に1.5とか1.6のような係数のフォーマットを刷り込んでしまうのは、私には想像することすら困難だ。

コストも重量もヘビー級だが、「不退転」で臨むのであるなら、正直フルサイズから入るべきだと思っている。そのほうが身につく事柄も、獲られる画もちょっと違ってくると思っている。

フルサイズを考えるにはフルサイズを出しているメーカーになってしまい、フォーサーズは残念ながらこの時点で外れる。LEICAも今回は問答無用で外れる。入門者には難しすぎる部分がある。いかに心もとなくてもセンサーダスト対策を持っているボディーにすべきだろうと思うから。

Canon5D2のセンサーダスト対策は、とても心細い。噂では5D3はカタログスペックは同一表現ながら、実際のゴミの付き方はかなり違うらしい。もちろん良好らしい。しかし、センサーダストも勉強のうちと割り切ればいい。

ネイティブな焦点距離感+浅い深度と、よくこなれた操作系とメニュー系を得るために、敢えて5D2を選んでも全然間違ってないと思う。レンズは最初はキットレンズの1本だけでもOKだと思う。もう1本持つなら70-300Lか100-400Lになるだろう。あるいは、撮影対象が人物メインなら70-200F2.8L(IS)になると思う。いや、キットの24-105Lは、あまりにガッカリな部分もあるので、最初から24-70F2.8L2がいいかも知れない。しかし入門者が持つにはたとえそのお金が出せたとしても、その総額を思うとあまりにプレッシャーが大きいかも知れないw

やはり現実問題としては、キットレンズ2本つきで11万程度で揃うOM-Dあたりのほうがよほど気楽に臨めるのではないかと思う。