引用記事:人事が明かす採用現場での「学歴差別」の実態【2】 成功事例に学べ! 差別を逆手にとった賢い就・転職活動のノウハウ

リクルート出身、元大手メーカーのカリスマ採用担当者の人材コンサルタント常見陽平が、企業が頭を下げてでも欲しがる人材に成長するヒントをお伝えします。小手先のテクニックに頼るのではなく、流行に左右されずにビジネスパーソンとしての底力、生き抜く力を磨きましょう。

 皆さん、こんにちは。今回も「学歴差別」をテーマにお届けします。採用現場での差別の実態は、前回お届けしたとおりです。

 では、具体的にどうすれば学歴差別を乗り越え、納得のいく就・転職活動ができるのでしょうか。私の最新作『くたばれ!就職氷河期 就活格差を乗り越えろ』(角川SSC新書)をもとに、本には書き切れなかったここだけの話も含めてお届けします。

学歴差別は「ある」 それをどう乗り越えるのかが問題だ

 前回の記事は大反響で、この連載の中でも過去最高のアクセス数でした。いかにこのテーマへの関心が高いかがうかがえます。ネット掲示板でもスレッドが立ち、このニュースが配信されているmixiでは、このニュースを元に2,000人弱が日記を書きました。

 賛否両論、たくさんのご意見をいただきました。「学歴差別はあって当然。差別ではなく区別」という肯定のご意見もみられました。一方で「ムカつく!」という趣旨のお怒りのメールもあれば、「そもそも学歴差別なんてあるのか?」というご意見もありました。

 ただ、採用の最前線にいる私からすると、データ、ファクトから見てもこの問題は存在しています。大手企業の学歴別ランク分けの表や、学校群ごとにセミナーを分けて実施している実態などを目撃してきました。差別とは違いますが、教育学関連の学者が学校群ごとの就活実績を時系列で検証している調査もあります。

 私は差別を礼賛しているわけではありません。「ある」という現実を受け止め、「ではどうすればよいのか」を具体的に考えるべきだと考えています。

■徹底的に対策しているか? 努力が実を結んだ実例がある

 これは主に新卒を中心にした話なのですが、学歴差別を乗り越えるためには、初期の選考を突破するのが第一のカギです。まともな人事・採用担当者がいる企業なら、筆記試験の最高得点者や、群を抜いたエントリーシートを見逃しはしないでしょう。

 たとえば、難関大学卒業生が大多数を占める、大手広告代理店から内定を得た帝京大学の学生がいます。彼は、SPIによる足切りを避けるために、4冊の問題集を活用し、完答に近い状態になるまで何度も練習しました。1日7時間以上、SPIの練習をすることもあったとか。

 第一志望の上場企業に内定した杏林大学の学生もいます。彼女はその企業に提出するエントリーシートを、社会人に何度も添削してもらい、推敲を重ねました。その企業だけで、20人以上のOB・OG訪問をして、内定を得た学生も知っています。

 ドライに学歴で足切りしている企業も確かにあります。しかし、スラムダンク安西先生の言葉ではないですが、学歴で「あきめたらそこで試合終了」です。

■自分の強みを忘れず、その大学群でのトップを目指そう

 人は、自分の強みを発揮した瞬間、最高にパワーを発揮し、イキイキと活動することができます。私の経験によれば、下位校の学生には、上位校の学生にはないハングリー精神、積極性、ホスピタリティ、滅私の精神、行動力があります。あなたにはなにがあるでしょうか?

 偏差値40台前半の大学から、大手ショッピングセンター開発・運営会社に内定した学生がいます。彼は、飲食のアルバイトで発揮した目標達成意欲、ハングリー精神、店長から叩き込まれた仕事魂などをアピールしていました。内定した企業だけでなく、ほかにも数社で最終面接まで進みました。

 多くの企業は、人材の同質化・硬直化を恐れています。上位校以外の大学からも採用したいのです。昔からある就活ノウハウではありますが、その大学群の中でトップ層になりましょう。「意外に優秀だ」と思われれば、就活は有利に進みます。

■自分にあった企業選びに最大のパワーを割け

 新卒でも中途でも、就・転職活動においては、業界・企業研究によりパワーをかけるべきだと思います。自分を採用する可能性があり、活躍できそうな企業はどこなのか。自分が勉強してきたことと、相性のよい企業はどこなのか。そうした情報収集をせずに、大手企業をかたっぱしから受けていては、よほど優秀でない限り、落とされて当然です。

 学校(群)別の採用状況や、経営トップ層の出身大学はかならず調べましょう。大手人材紹介会社のキャリアカウンセラーによると、新卒で高学歴層を採用している企業は、中途でもそのクラスの大学群から採る傾向があるようです。

■高学歴層も意外にたいへん

 高学歴層も意外にたいへんです。「優秀で当然」と思われているため、「このくらいできるだろう」のハードルが高いのです。そのハードルが超えられないと、「これでも東大なのか?」「今の、本当に早稲田?」などとなってしまいます。

 転職を繰り返す人も多いです。世の中には、「うちも◯◯大学出身の人を採用できた」と喜ぶ中小企業経営者もまだまだ多いので、転職先は見つかりやすい傾向にあります。しかし、見つかりやすいがゆえに、腰を据えてがんばることができません。「こんなに優秀な自分の居場所はここじゃない」と、漂流してしまうのです。

 また、社内においても、高学歴だから生き残れるとは限りません。ある大手メーカーでは、50歳以上で課長になれない人の割合がもっとも高いのは、なんと慶應義塾大学とのこと。まぁ、採用する絶対数が多かっただけかもしれませんが。

■目の前の仕事に愚直に取り組み、「売れる成功体験」を重ねよう

 20代後半から、学歴よりも職歴が重視されるようになります。要するに「仕事がデキるかどうか」が見られているわけです。

 職歴を磨くにはどうしたらいいか。転職に限らず、キャリアの基本ですが、まずは目の前仕事に愚直に取り組んでみること。そして、小さくても良いから成功体験、「名刺代わりとなる仕事」「仕事のプチ武勇伝」を作っていくことです。

 人生の各ステージで小さな成功体験を作り、それを買ってくれそうな企業を探し、タイミングを見計らって納得のいく転職をしたいものです。

 次回は若手社員を襲う「プチ搾取」についてご紹介したいと思います。お楽しみに!

常見 陽平[著]