カメラ:GRD3第一所感

とりあえず、全てのセッティングを試し、自分なりの第一印象がまとまったので、書き留めておくことにした。

初代GRD購入から3年半、2をパスして3を手にすると、まさに浦島太郎というか、カルチャーショック状態だった。外観が素人目には区別がつきかねるほど似ていることがそれをさらに助長したような気がする。

GRDの最大の武器は、その速写性だが、起動に関しては劇的によくなったとは思わない。ただ、撮影のテンポは、話にならない。全く別物と言っていい。現代のカメラなら当たり前なのだろうが、RAWで撮影していて、『処理待ち』ということにはあまり遭遇しない。

初代からメニューの中に装備され、2でダイヤルに実装されて飛躍的に実用性を増した『マイセッティング』だが、3は、登録したセッティングへの自由な編集機能がついて、6種の内部保存と3種のダイヤル割り当てがつき、しかも初代になかったファンクションボタンが2では1個、3で2個、しかも割り当てなくても右手親指で操作するアジャストダイヤルでダイレクトにISO変更できたり、Fn1ボタンでRAW⇔Jpegができたりとなったことで、もはや、こまごまとセッティングをいじる部分がサブ的機能であって、マイセッティングのほうがメインの様相を呈してきた感がある。しかもそのセッティング個々に名前をつけられるから、さっき食べたものが思い出せないような年寄りには実に有難い。開発者の中に物覚えの悪い人でもいてくれたのだろうか?w 私くらいの年齢層は正直助かる。

グリップ部については、素材や形状・寸法など、初代以来何の変更もないと言っていいが、親指側については、初代から拡大する液晶に押されるかたちで、じりじりとその指の置き場が減ってきて、3では親指の置き場は実質液晶画面の右上となった。ゆえに、まだロードバイクで走行中に初代ほど安心して丸腰ストラップなしの状態のGRDを振り回す度胸が持てないでいるが、これも慣れが解決するしかないと思う。

ひととおりの撮影操作をしてみて一番有難かったのは、RAWの処理速度だ。RAWで撮っているということをいちいち意識する必要がまずない。3の購入に際して初代では2GBまでだったSDの容量はSDHCまで拡張され、後述するようにRAWの常用の必要性から8GBのSDHCを買ってしまった。1時間半の散歩一回で多いときは約500枚撮影する私なので、それをなんとか賄える容量として、最低8GB必要なのだ。

初代では、ファインダーやワイコンも全て購入したが、予算の問題もあり、今回はボディーのみの購入となったが、ワイコン装着は、そのスナップ性能を大幅に減殺することになるので、現状ワイコン装着は見送っている。ファインダーも初代は晴天下では液晶がよく見えないので使うこともよくあったのだが、2以降で装備された電子水準器と明るい液晶のおかげで本体のみの運用で問題ないと考えている。夜景撮影時などは、明るい液晶はまるで暗視カメラのように使えるので、フレーミングであまり困らない。



さて、実写結果だが…


まずは、夜景。F3.5 30秒 ISO64 マニュアル露光


私のように2005年型初代GRDが最新カメラであった人間にとって、全く別次元にいいとしか言い様がない。
逆に言えば2003年型のE-1がまだ夜景撮影で使えていることはけっこう驚くに値るすことなのかも知れない。
しかし、それにしても電子水準器は値千金だ。

次にモノクロ。F3.1 1/250sec ISO64 -0.3EV モノクロセピア

まだまだホンモノの銀塩には太刀打ちできないが、イルフォードXP2にはなんとか勝負に挑めるかも知れないくらいのトーンは出はじめた。特にデジタルは、白トビに近い部分のハイライトのトーンがサッパリ玉砕してしまうと思っているが、今回、このGRD3では、撮る前から諦めなくてもチャレンジを繰り返してみる意欲くらいは持たせてもらえそうだと感じている。
詳細な印象を述べれば、このモノクロ画像の場合、自転車のリムの金属感、ぶっちゃけ飛んでいるのだが、その飛び具合がちょっとだけTri-Xを思い出させてもらえたというか… デジカメを使うようになってから初めて感じたものだ。全然期待してなかっただけに、けっこう好感を持っている。


一般撮影では、もちろんどうにでもなることが多いので、あまり細かなことにこだわらないが、ひとつ言えることは、デフォルト画像がかなり見た目重視になったこと。
F3.5 1/330sec ISO400 0.0EV


F4.0 1/217sec ISO64 0.0EV

シャープネスは、一番ソフトに振るのは、私流儀で従来通りなのだが、それでもシャープネスを下げ切れてないと感じる。彩度もいささか高めに感じる。反面、撮って出しで手抜きをし易くなったとは言える。

レンズ性能だが、文句なくよくなった。

F1.9(開放) 1/189sec ISO400 0.0EV


F1.9(開放) 1/7sec ISO154 -0.3EV

特に大口径広角レンズに期待すべきではない後ろボケが、思いのほか良好なので、満足している。レトロフォーカスの広角は大体において、ガチガチか、グチャグチャなボケになるのだが、このレンズはいい。しかもアウトフォーカスのいいレンズというのは昔日ならば焦点面にあまり期待できないものだったのだが、このレンズは質感描写、立体感など含めてとても焦点距離たったの6mmの画角72度F1.9のスペックを持ち合わせているレンズとは思えない。

全くの余談だが… 上の仏壇は、実家の父親の仏前にGRD3購入を報告したときの記念写真だが、ごはんの向こうにMINOX-Bが供えてある。もう動かないがw

さて、そうは言うものの、そういう派手目な絵作りで、何も問題が無いわけではない。

まずはJpeg F2.2 1/2000sec ISO64 0.0EV

アウトフォーカス、具体的にはこの画像の場合左にある後ろボケが、激しくトーンジャンプしてしまっている。トーンというよりも色ジャンプだ。12bit時代のCanonのDSLRでよく見るパターンの『やり過ぎ』たためにアラが見えてしまったというやつだ。

で、RAW現像 F2.2 1/2000sec ISO64 0.0EV

さすがに、汚いボケは減るが、それでも2003年〜2005年頃の我がE-1や初代GRDほどきれいではない。

※いずれにしてもリサイズして、WEB圧縮を60%ほどかけてしまえば、どっちこっちなくなってしまうこともこうして見れば言えるのだがw

ただ、Web上で、どれほど微妙なトーンが暴れないのかについて職業上命をかけている私にしてみれば、臍を噛む思いに変わりはない。

白トビに対する耐性ができたとは言え、反面、私の大嫌いな色飽和はよく起こり得る絵作りになってしまったことは注意が必要だ。

で、その白トビ耐性については、初代比で言えば、EV1.0くらいはあるように感じる。初代ならば普段から-0..7〜-1.3EV。腹をくくれば-2.0EVまで持っていっていたのが、GRD3ではそのような極端な場面は減った。だいたい-0.3EVをデフォルトで済むし、ヘタをすると補正なしでもいける。

また、液晶モニターの性能他、旧来のGRDユーザーが期待・要望してきた以上の撮影アイテムの性能向上のおかげで上がりの出来栄え以上に撮影作業そのものが快適になったことは実に有難いし、そういうユーザー本位なメーカーにお金を落とせることを心底喜んでいる。

結論から言えば、古いカメラのほうがいいからということで、GRD3を忌避するほどGRD3は駄目なカメラではない。デメリットを補って余りあるメリットがある。で、そのGRD3で露見した欠点はRAWデータでバックアップすることにより、どうにでもなりそうということで、大容量メモリーカードとデカいHDD、そして、何らかの優秀なRAW現像ソフトのような道具でしのげそうだと思う。

最後に…
アジャストダイヤルに最初に出るようにセットした項目は『測光方式選択』。初代からずっとマルチパターン測光をデフォルトとしていたが、3を買って、しばらくいろいろと使ってみているうちに中央重点をデフォルトにした。これは中央重点がいいのではなく、測光方式を適宜切り変えるほうが、露出補正をあれこれ忙しくいじるよりも的確なことが多いことに最近たまたま気づいたから。で、以前よりも中央重点のほうがスタートとしては的確だと思うようになった。しかし、これはGRD3についてであって初代GRDには当てはまらないのかも知れない。新緑の季節、その木々のトンネルをくぐることの多い今の時期は中央重点のほうが出番が多いのだ。真冬ならば実質(高等な)平均測光たるマルチパターンに戻すのかも知れない。

GRDを使って3年半になるが、まだまだ奥は深いように思う。

写真は全て『撮って出し』をリサイズして緩んだ画像を締める目的で40 0.3 1のアンシャープマスクをかけたのみ。実質的に『撮って出し』。